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 未曾有とか、観測史上最大とか、千年に一度とか、最大級の形容詞のついた地震が東北から関東地方にかけて起こった。2011年3月11日のことだった。地震のすさまじさもさることながら、テレビの画面に映された津波の猛威に驚かされた。家や飛行機、大木など、動くはずがないと思っていたものが、いとも簡単に流されていくのだ。

 離れたところから私たちが何をすればいいのか、途方にくれるばかりだが、記憶に残る阪神・淡路大震災での救援活動が甦る。自分自身も、地震発生から4日目に、キャンプ仲間と食料や自転車を車に積んで大阪から被災地に向かった。

 現地で、キャンプ仲間にたくさん出会ったことも心に残っている。こういうときには私たちの生活技術やリスクマネジメントの力が生きるのだ。そして、多くの人が熱い志を
持って救援活動に駆けつけてくれたのだ。

 炊き出し用の大きな鍋も全国のキャンプ仲間から送ってもらった。薪でも使える大鍋をもっとも活用しているのはキャンプ場だという狙いはたがわず、日本キャンプ協会から情報を流してもらったら、おそらく100近くの鍋が被災地に送られてきた。ちゃんとお礼を言えなかった心残りを、今、改めて言葉にしたい、あの時は本当にありがとうございました。

 しかし、キャンプがもっとも生きたのは、子どもたちの心のケアだろう。あの被災地の中で学校が長期にわたって避難所となったために遊べない、学ぶことのできない子どもの心、家族や家など大切なものを一瞬に失った子どもの心を癒す遊びを提供してくれたのが、キャンプ仲間たちである。また、春休みには、たくさんのキャンプ組織が子どもたちを海へ、山へ連れ出して、思い切り心を開放させてくれた。

 目に見えない心の傷を持つ子どもたちを癒すために、遊びの大切さ、仲間の大切さ、心の負担を安心して口に出すことの大切さを教えてくれたのが、直前にハリケーンの被害を受けたマイアミから送られてきた一冊の本『災害に遭った子どもたちへ』だった。被災地で偶然出会った高校の英語の先生、精神科医、印刷屋さんなどの協力で、翻訳された本があっという間に出来上がって被災地に配られた。

 何年かたって、大学の授業で被災地の話をしたときに、突然泣きだした男子学生がいた。彼は、高校2年のときに被災し、家族が家の下敷きになって死亡した経験を持っていた。深い心の傷は残り、数年たった後にも災害の話を聞いただけで、人目もはばからず、大声で泣き出したのだ。

 こんな心の傷を癒すために、キャンプが有効な手段だと、先の本は教えてくれていた。私たちも何かをしなければならない。地理的にも経済的にも能力的にもさまざまな条件の違いがあって、さまざまな支援活動があるだろう。そんなさまざまな支援の中で、この震災で多くの大切なものを失った子どもたちの心の傷を癒す、グリーフ・ケア・キャンプ(Grief Care Camp)もできればいいと思う。

 阪神・淡路大震災の時に被災地で配った『災害に遭った子どもたちへ』は、当時の日本ではまだPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉が普及しておらず、残念ながら有効に生かされたとは思えない。しかし、今は違う。人、金、知識などいろいろな準備も必要だが、あわてないで、あせらないで、じっくりと取り組めば、グリーフ・ケア・キャンプは意味ある支援活動になる。それはきっと、キャンプのすばらしさをたくさんの人に伝えることにもつながるだろう。


CAMPING 140号より